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Jasmine(1993) / 7月の雨なら(1993)

まだ10代の頃にも、radio(FM)で聴いて「これは!」と思った曲が幾つもある。
1990年代前半"girl-pop"の括りで女性soloが林立したが、彼女も沢山いた中の一人として捉えられてたんじゃなかろうか。
佐藤聖子。
彼女の3rd sg.「Jasmine」は、FMでpower-playとしてバンバン流れていて長く心に引っかかった曲だった。



初夏、元カレを街で見かけた。交差点、向こうにいた。
この曲で描かれる言動といったら此れに尽きて、尽きて、他に何も無い。後は、そこに至るまでの前後にある物語、この場面での心象描写をどうするか。でしょうな、問題は。
何故なら「元カレを街で見かけた」と元も子もなく書いてしまうと「うわ、ベタだ」
二流だ三流だ、ぶっちゃけ恋の物語の最後、episodeを、ひと添え。そんな状況だ。して、この曲はこう〆られる。詞を長めに引用。

次の青いシグナル 今日はあなたが
見送る番なの
強く強く恋した あの気持ちは消えない
さよならじゃ何も 終わらなかった
きれいな横顔だけ 残してあげる
陽射しの向こうに
----- 佐藤聖子「Jasmine」より
「あなたが見送る番なの」で、曲の彼女は過去に、あなたを見送ったことが読める。それが別れだったことも垣間見える一節だ。
見送るほうは相手の表情がわかる。逆に、見送られるほうは振り返らない限り表情が掴めない。だから、見送る相手に「横顔だけ」彼女は「残してあげる」のだ。ならば「別れたけどワタシは大丈夫」の横顔か、「忘れないでいて」と記憶させるが為の横顔か…
「横顔だけ」から詰めて行く、向こうを見ないのだ。あなたは私の視界に入らない。たとえ入ったとしても一瞥の程度だ、眼中にないのよ。
完全に別れるからこそ出来る横顔、なんだろうなぁ…(嘆息)
これって何かのdramaのようだ。

話は変わる。"girl-pop"で括られた女性soloは大きく分けると、優秀なbrainと組むtypeと自作自演派とに分かれる。前者は途中、路線変更の過程で自作に転じて、結果、培った個性が静かに先細ってゆく。で、これでcrushした人が多いんだ(苦笑)
路線変更の過程で痛い目を見る点では、実のところ、"girl-pop"は女性idolと同質なのかもしれない。月日を経て再び手を組んだのは、加藤いづみ - 高橋研のlineくらいしか私には思い当たらないのだ(このlineで作られた傑作が1994年releaseのsg.「坂道」)。
一方で後者。基本が自作自演だった平松愛理や広瀬香美といったあたりは時代をsurviveしている。曲では女性らしい面を備えながら、その実、男性と対等以上な一面を備えて男以上の気の持ちようがあったから生き残ったというあたりか。
佐藤聖子は、どっちかといえば、優秀なbrainと組んで巧く行くtypeに見えた。albumには彼女自身の曲もあるが、馬場俊英が手がけたsg.「Heartbeat Groove」や、作詞作曲を他人が手がけた「Jasmine」のように彼女の資質を識る人間と組んだほうが、彼女の魅力が際立つように思えたからだ。
この人は誰と組んでんだろ?作詞作曲や編曲、参加musicianを必要以上に気にするようになったのは、私がこのへんの掛け合わせのアヤを知ったからだ。

ところで、「Jasmine」の詞を書いた人の名を1ヶ月後に目にすることとなる。
西脇唯。
彼女のdebutは佐藤聖子「Jasmine」が出てから、ちょうど1ヶ月後(調べて吃驚)。



此れを聴くと、「Jasmine」の主人公が佐藤聖子の持つものに則したものだと十分にわかる。
恋愛は倦怠を迎えつつあり、相手への苛立ちが顔を覗かせるようになってきた。今日もcafeで待ちぼうけさせる相手を待ちながら思う。
恋することだけに 縛られたくはない
7月の雨なら一人歩き出せるかも
----- 西脇唯「7月の雨なら」より
こういう言葉が出るのは、それでも未だ恋することに縛られているからだ。
けれど、その縛りを解くキッカケは些細なこと。そう言っているように見える。
どちらの曲にも共通するのは、裏に当時流行のdramaの脚本があるかのような感じ。そう思えてしまう点だ。日常の中に潜むdrama的要素の抽出、その巧妙さが絶妙。ただ、これでもか!的な虚構性までは、ない。
練りあがった世界を曲の中でガチに構築されて、それは虚構だッつーのに「やられたッ」となるまでは、まだ。でも、巧いわ。という。

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