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温度(2000)

この曲を聴いた当時、思ったのは「色が変わった」だった。
それまでの彼女は、「うた」の中の感情の彫りが少なかった。だから影が見えなかった。その色が違う。影がついた。
それは笑い顔しか見せなかった子が、泣き顔をやっと見せた。そんな感じに。
しかし、彼女自身の音楽が変わりだした矢先、彼女はmajorの音楽製作の舞台から無情にも引きずりおろされるのだ。

路上で楽器(guiter)を手に歌っていた10代の少女がmajorの音楽の表舞台に。
「現役女子高生ストリートシンガーソングライター」というのが「いしのだなつよ」時代の彼女について回ったcopyだった。
2009年の今となると"何処かで覚えのある話"も一つあるんだがーーー(苦笑)まー、あーれーはー、そこからunitになるんだから…と気付く、…だろう。が奇しくもやってる大元締めが同じレコ社(S○ny)なのな(爆)と気付く、と。
「ううむ、なんとも…」
と、しょっぱい気分で唸るしか無い(その"何処かで覚えのある"彼女は、その後、自身の音楽をやりたいと転身を果たすが、それはまた別の話)。
話を戻す、と。
「いしのだなつよ」は自分の音楽を「やる」前に、major側が成果の出ない彼女を切り捨てた。ように当時の私には見えた。
-----嗚呼、「うた」の中で泣き顔を覚えたばかりなのに。
此処から化けるのにもう少し待てなかったのか、それが契約解除を聞いての私の素直な感想だった。

おぼろげな記憶だが。
彼女の「ひまわり」(1999)は、歌の中に笑い顔しか見せなかった。という位えらく、えらく"まっすぐ"な印象を残した。10代にしか出せない青いまっすぐさは、余りに過ぎた。
そのまっすぐさが当時20代の私には「つい最近の、でも、あれは確実に昔のこと」だけに素直に受け入れ辛いもので持て余した。10代が憧憬の彼方になるには、僅かばかり早かったのだ。
その少し前に出た川村結花の「ヒマワリ」(1998)は笑いながら泣くような曲だったことを思い出しながら、同じ題名(平仮名、カタカナの違いはあれ)の曲に横たわる差異こそが年齢の差であり作り手の個性なんだなぁ…と思った。

それが変わったのが「温度」という曲。
それまでの"路上から"という匂いが消えた曲に「ああ、変わった…」と思った。
"まっすぐ"に笑うだけじゃない、"まっすぐ"に前を向くだけじゃない。"まっすぐであること"は同じでも、時には、前を向いても涙は頬を伝う。

先日(2/11)、彼女は「春空-ハルソラ-」で再び、majorの舞台に戻って来た。
今度は「泣かせるシンガーソングライター」「オンナを泣かせる女」というcopyを引っさげて。
けれど、あの頃から。「温度」の時に石野田奈津代は泣かせてたんだ。
そう思う。

-----、major復帰おめでとう。なかなか出来ることじゃないよ。
そんな思いを、この文章に託します。




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