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Hurray!(2009)

アルバム評用に"review"のカテゴリーでも作ろうかと(かなり本気で)思ったんだが、此のまま"monologue"で推し進めることにする。
こういうのは「あー、あの人、なんか一人で言っているよな」という感じでええんとちゃう?と思えたから。時間をかけてアルバムを聴き込み、しっかり作り込んで練り込まれた文章をあげる"review"ではない気がするのでね。
そう、長い"独り言"程度に。

2009年リリースのアルバム。タイトルの"hurray"は「フレーフレー」のフレイ、だそう。「頑張れ」のかけ声からアルバムタイトルへ、だが、アルバム全体に誰かにエールを送るという感じは正直無い。
こちとらすっかり音楽雑誌から縁遠く、ラジオ番組の類も聴かなくなり、テレビはもっと観なくなり(爆)情報収集してアルバムを心待ちに待つこともなくなって(記憶が確かなら2000年『Soul Serenade』からか)数年以上になりつつある中で、このアルバムを探るにあたり唯一の情報源が一つだけ、私の手元にある。
過日、地元FM局(K-MIX)が放送したアルバムの1時間特番。
静岡県でライブをするのはこの後、そうねえ、半年先くらいじゃね?というのにアルバムプロモーション+ライブのプロモーションをかます姿勢に「費用対効果がちっともねええーッ」と(以下発言自粛)
まあいい。
ともあれ、RadioSHARK使ってPC(Mac/iBook G4)で録音し、MPEG4のファイルにしてiPod nano(2nd generation)に移して…なんて聴き方は以前なら、そうねえ、10年前。それこそ『FIVE KEYS』の頃は考えられないことだ…
なる技術革新のことは横におく、本題。
その地元FM局の番組で、アルバム制作に関して、こういった趣旨の発言があった。

ゴスペラーズに様々な方面から、こういう風な楽曲作ってくださいってオファーがあって。こういうの、やってみませんか?って。それに応えて行ったら曲が出来てった。
このアルバムの功罪は此処にある。
映画で使われる曲。
番組のスポットで推され、テーマとして流される曲。
(深夜)アニメの主題歌。
それらのオファーはそれぞれバラバラの時期にやってきて、その時々其れに応じて彼らは適時見合う--------それこそ文字通りオーダーメードに楽曲作っていった。当然ながら其れら楽曲はシングルとしても切っていく。
で、アルバムにするにあたり「アルバムとして」一枚、一括りにした。
そしたら、シングルになった曲はアルバム中6曲(※アルバム収録楽曲の半数に相当)もある状態になる。東○EMIアーチスト真っ青なシングル詰め込みの幕の内状態だ。ハーフベスト、というべきか。
それでも「彼らが歌った」という縛り・括りはあるが、外からのオーダーに応じたものなので、アルバムにおけるコンセプトに根ざすという考えは挟み込まれない。
『Hurray!』の前、彼らは「このアーチスト、カバーしてみません?」「この曲に参加しませんか?」というオファーに応じて歌った作品群を一つにまとめた『The Gospellers Works』をリリースしている。
此れは「ゴスペラーズ、外仕事のまとめ」だ。
彼らがリリースしたアルバムの流れからすれば今回新たに出た流れであり、アルバムの立ち位置としては、尾崎亜美のアルバムなら『POINT』シリーズ(提供した楽曲をセルフカバー)、中島みゆきの提供曲セルフカバーしたアルバム(ex.『おかえりなさい』『御色直し』)の類に当たる、と思う。だから別の面が出て当然。
な、わけ。だ。けど。前回〜今回のサウンド志向は、この話には関係ないので横に置いて。「ゴスペラーズ、ご要望にお応えします」で自分たちのオリジナルアルバム------自分達の本域の新作アルバムを一枚、そのうち半分を作るもん(爆)となるのだ。それぞれ適時応えたら、一枚にしたってコンセプトなんて無くてバラバラだろうに。
だから、"あなたを想う"というコンセプトを元にガチガチに練り上げられた『Soul Serenade』(2000)と、このアルバムは真逆だ。

私には、オーダーメードに応える楽曲(=シングル)を一枚のCDにまとめて、他に新曲入れて「アルバム」という形にしてみたら「実のところ、コンセプトは他人の曲を歌うという縛り」な『The Gospellers Works』な雰囲気に、オリジナルアルバムがなってしまったように見えるのだ。
『The Gospellers Works』前、『Be As One』まで脈々と流れていたオリジナルアルバムにおけるゴスペラーズの濃さがなく、このアルバムではえらく薄味に感じられる。『The Gospellers Works』の外仕事な流れをひきずっているのではないか?こうも薄い理由、其れは前述した「様々なオファーに応じた」云々に根があるのではないのだろうか?
それは悪いことばかりではない。功罪と私が書くのは、だからである。
"功"があるとしたら、シングルになった曲には新しい側面を打ち出せた曲もあること。これを機に新しい人と組めたこと(常田くんとかね)。新しい発想、ヒントで曲が作れたこと(クラッシックから引っ張られて、とか)。
"罪"はオリジナルアルバムとしてのコンセプトの希薄なアルバムになってしまったこと。一定時期に書いてリリースした、オーダーメードな曲を並べた、という時系列的なアルバムになったことか。

前エントリーで呟いた「「Real tight」の濃さが懐かしい」というのは、これまでのオリジナルアルバムにおけるゴスペラーズに過分に漂う濃さなのだと『Hurray!』を通じて、改めて気付く。
得てして、こういう濃さは世間様が描く"「永遠に」「ひとり」を歌うゴスペラーズ"には求めない像でオファーの対象じゃない(爆笑)それを彼らもわかってライブの中でバカスカ出してたりするコアどころだ。
で、彼らは此れまでオリジナルアルバムで1曲、2曲と忍ばせていた。が、今回其れが落ちたアルバムと言える。

あとひとつボヤくと…
ゴスペラーズって大御所との相性、悪くない?(起爆)
「BOO」の筒美先生といい「ローレライ」の松本先生といい、ゴスペラーズが大御所と呼ばれる方と組んでイメージあがった!とか新境地だ!とか、良くなった印象がないんだよねえ…
そういった音楽の化学反応があるとしたら、むしろ、掛け合わせの良さは今回なら常田くん@スキマスイッチなんだもの。一度ならず二度もか、ゴスペラーズ(と、スタッフチームよ)。
彼らと年齢の近しいor同世代か、世間じゃ無名の人を拾い上げて--------、のほうが彼らに合う気がするのよ。どうなんでしょ、この見解。

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