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永遠に(2000)

珍しく、シングル曲のハナシ。

これまで過去幾度か「永遠に」に関して文章をオトしてきた。そのブラッシュアップ版になれば良いかなと思いつつ。こう前置きして書き始めるとする。

「永遠に」について語るとなると、どうしても、自分自身の心の過程を語らねばならなくなる。だからか、基本、私にとって「永遠に」の存在は、"重たい"。
その心の過程を非常に大雑把にまとめると「最初は良いと思わなかった。が、途中、ある日を境に評価を改めることとなって、現在に至る」だが、この過程が1年余りに渡り、少々ややこしい感情の吐露となる。文章が長く、言い訳じみてくる。感情が碇のように重しとなり、どう書いても文章が重くなる。
書いてて厭になる、そんな言葉が出てしまう。

☆☆☆☆☆

「永遠に」が出るまで。当時の私が、彼らがシングルを切るたびに思ったことは「ゴスペラーズ、本当に、このシングルで売れたいんですか?」だった。
『R&R NewsMakers』初登場時のインタビュー席上で、安岡さんが「僕等は売れたい」という趣旨の発言をしている。1996年リリースのアルバム『二枚目』の時点でハッキリ示された指標は、ゴスペラーズにとって、別に変わったものではない。『二枚目』リリース以前から幾度と繰り返されて来た言葉だ。加えて別の席上ではメンバーの「バラードで売れるのはわかる。だから(曲調は)アップで売れたい」という趣旨の発言がされており、これも己の記憶にロックされている。
兎にも角にも「僕等は売れたい」というのは、それだけ彼らの切なる望みだったのだ。それを一度ならず何度も、これでもか!と否応なくラジオや雑誌で知らされていて、此方は彼らの「売れたい」望みとやらが思考に刻まれている。だから、私は「売れたいのかなあ、このシングルで」とゴスペラーズがニューシングルを出す都度毎に思うようになる(苦笑)
実のところ、この「僕等は売れたい」こそが、ゴスペラーズが翻弄され振り回される、なかなか手強い指標だったのだと(今なら)思う。
後に"苦節7年"で括られやすい「Promise」から「永遠に」までの過程を見ると、「夕焼けシャッフル」「あたらしい世界」「熱帯夜」という流れに、今なお、翻弄の"果て"が嗅ぎ取れる。
「熱帯夜」を出したら「さよならゴスペラーズ」の手紙が殺到した、と後に(『What's IN!?』でかな)彼らは笑い話にしているが、「売れたい」「売れたい」の結果「「夕焼けシャッフル」の次の次が「熱帯夜」かあ…」というものは確かに存在した。その逆(「よくやったぞ!ゴスペラーズ」)もあったが、ファンの反応が二分されるほどのものが「熱帯夜」には、あった。

「本当に、この曲で売れたいんですか?」と新曲リリースの度に思う人(私だ)にとって、「永遠に」は、リリース時の段階で、ゴスペラーズらしさに欠けるバラードに映った。よく出来た曲、他の人がやったら私は好きになる曲だ。そう思う。そして、ここから先の評価が出来ず、思考回路が止まるのだ。
「この曲で売れたいのかね?」
そう思って。
ゴスペラーズの"個性"を幾分、感じづらい。だからか、ゴスペラーズの色に曲が染まり切っていない。そう思えてしまう。誤解ないように言っておくとリードが黒沢さんだけだから、ゴスペラーズの個性を感じづらい云々ではない。形態がそれでも、ゴスペラーズの個性や色が出そうなところ、それが曲から漂ってこない、そう思っただけだ。
c/wに収録された「夏風」のほうが「バラードでも、ゴスペラーズらしいじゃないか!」と手放し称賛なのに対して、「永遠に」は「どうなの?「永遠に」で本当に売れたいのかヤツらは」と思う。思うと、袋小路にハマった気分になる。結果、心がドンドン暗澹としていく。
「永遠に」初見が焼津だったのだが、その時の歌の評価は「CDのほうが歌えてる」だったのも己の暗澹たる心境に拍車をかけた。その結果が「アタシは、アルバムプロモーション見ないし、そういうのも聴かないぞ」-----
情報を完全拒否して、事前情報入れず先入観持たないでアルバム聴く他ないなぁ…、と思うほどゴスペラーズが楽しめず、この頃には厭になっていたのだ。

「永遠に」は「ゴスペラーズ坂ツアー・2000」ツアー中、僅かに僅かに、じわじわ私の中で評価を上げていく。その最大にして最終決定打が、2000年12月3日、名古屋センチュリーホール、3階席歳後列で聴いた「永遠に」だった。
どこか"彼ら"らしくない曲だ、だから好きになれないと思った。どうなんだ?そう何度も思っては嫌いになりかけていた曲への評価が一気にひっくり返る。
「悔しいけど、あんなに歌えるなら売れても良いよ。今日の「永遠に」なら。もう売れて良い」
私は、この日の「永遠に」に対して感想をえらく俗物的表現で洩らしたが、この感想は、後に、この名古屋行きにご同行した方の、この言葉に昇華される。

「あの日には、結局、「予感」をお持ち帰り出来たんだわ。これから、ものすごい事になるっていう、不思議な予感。」
「永遠に」が売れだした2001年には「永遠に」に対する暗澹たる気持は消えていた。
「このシングルで売れたいの?」という暗澹たる気持はなくなっていて「「永遠に」?あの曲なら大丈夫。売れて良いよ、そういう曲だから」と、えらく自然に、あまり不安もなく、私は「永遠に」が売れる様を見ていた。

じゃあ「永遠に」は好きなのか?というと、それもまた言い切り辛いのだ、厄介なことに。
ベストアルバム『G10』リリース前に「ゴスペラーズで好きな曲、10曲投票」というのがあったが、私は100%「永遠に」を入れない。他の人が入れるから入れないのではない。「もっと好きな曲がある」「もっと良い曲がある」と他の曲を選びに走るから、ない。
これが「ゴスペラーズを語る上で外せない10曲」だったら「永遠に」は絶対入るし、選から洩れることはない。
心の過程が前述よろしく、あって。ある程度の起伏があれだけあったのだし、思い入れもあるでしょう?と言われると「それもまた違う」と返すだろう。こんなの、思い入れじゃないよ。この曲で手を焼いて、非常に苦労させられたんだ!と言うに決まってる(笑)
だから、今も「永遠に」の存在が重たい。あの当時、私が抱いた暗澹たる気持が消えても、重たいまま、今もどっかり居座られている。

☆☆☆☆☆

尚、今回は、以下の自分の文章をリライトの材料にし、書きました。ご静読感謝。
diary[010317]
GO UP HILL : discography - 永遠に[2003/Jan]
GO UP HILL - 愛憎?[2006/Apr]

永遠に
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