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FIVE KEYS(1999)

原点回帰(だけど、元の場所に戻ってはいない)。

1999年、このアルバムが出た当時のネット上の状態を今も思い出せる。そして、このアルバムを携えてのツアーのことはより印象深く記憶に刻まれている。この前にもこの後にもゴスペラーズにあっただろう幾多のターニングポイント。そのひとつが世紀末の夏の終り、"FIVE KEYS"ツアー序盤の戸田から浜松までの間にあったんじゃないか?あれから10年経た今も思うほどに。
アルバムが出る毎に前作と今作との違いはどうしたって生じるだろう、が、私が様々な反応をリアルタイムで、言葉という形で目にしたのが、この時(1999年夏の初め)だ。それは自分の持つ人との繋がりに「ゴスペラーズの音楽が好きな人」の流れが新たに出来て来たからわかったことでもあるし、また、ネット上での誰かしらの発言を実際に追ってみてわかったことでもある。
この時、目にしたのは、こういう言葉だった。
「それまでのゴスペラーズと違う」

それまで。それは『Vol.4』までのゴスペラーズ。
ところで。『Vol.4』というアルバムを携えてのツアーの際、ステージを観て私が思ったことは「この人たちはスタレビになりたいのね」だった。
徹底的にショウマンシップにゴスペラーズが走っていた点を捉えて「あ、この人たちはスタレビになりたいのね」発言をこぼしたのだ。2時間半を踊って、ひとたび話をすれば個々のキャラクターが立ってて、でも、歌はしっかり聴かせて(時には泣かせて)スッキリ会場を後に出来る。それに5人が全身全霊を注ぐ。
ゴスペラーズはエンターテイメントに徹している。そう思ったから出た私の「スタレビになりたいのね」発言だったが、悲しい哉、それはゴスペラーズが実際は自作自演出来るミュージシャン集団で、各自が歌うたいの集団だということを私が感じなかったという証左でもある(これには随分と後になって気付かされたわけだが)。

良いメロディーを作り、それに言葉をのせ、彼らが歌う。

この点を踏まえていたら、『Vol.4』も『FIVE KEYS』も大差ない。同じだ。だが垣間見えた「これまでと違う」と思う理由の大元は"サウンド面"にあるのだと思う。
モータウンを想起させるシャッフルビートの"ポップス"らしい楽曲「夕焼けシャッフル」が出たのが1998年だ。その「夕焼けシャッフル」から1年数ヶ月経って出したシングルは、ゴリゴリ"R&B"圧しな「熱帯夜」である(でもって、あのPVだ、あの衣装だ・爆)。アルバムに至ると、かつ同一人物がリード歌っている曲に限定すると、一方が「傘をあげる」、もう一方が「I LOVE YOU,BABY」になるんだぞ<待て。どっち聴いても、彼の才能を認めつつ私はガッツリ固まるんだが(自爆)
どうだろう。この幅振りを彼らからのコメント抜き、音だけ聴いて、どう理解しろと言うのか。理解の前に予備情報を入れたくもなるさ!と予備情報の為に雑誌を開けば「もう料理の話はしない」と言い放つ"最年長"のメンバーがいたわけだよ(起爆)
理解以前、印象を口にしてしまうだろう、これまでと違う。ゴスペラーズは変わった----------
詰まるところ「夕焼けシャッフル」の路線は、アルバム『二枚目』から徐々に強調・補強された路線だ。恐らく、この路線の萌芽はsg.「U'll Be Mine」と睨む(「Winter Cheers!」は正直、世間とポップスとに迎合し過ぎているきらいが、ねえ…)。
ポップス×R&Bが程よく掛け合わさって、彼らの良さも出て、周囲からも好評だった。だから、この路線に線を延ばして行くことにしたのでは。この曲の編曲担当だった田辺さんがその後も起用されるが、田辺さん関与の総決算が『Vol.4』のバラエティさでは。
そして、それを体現したライブこそ前述の、私が「スタレビになりたいのね」と言ったステージ、だ----------

「1st『The Gospellers』の180度向こうに『Vol.4』があるのなら、そこからグイッと針を『The Gospellers』側に180度戻した。これが「変わった」の印象に繋がったのかなぁ…」
"歌っている彼ら"は変わりない。だけど、変わったように見えるのはどうしてだろう。踏まえている点の違い、それが変化の理由に関与しているのなら、それは何だろう。そう考えた時に、こう洩らしたのを今尚、覚えている。

BOYZ II MENやTAKE6を聴いてR&Bをポップにやることを知って、その彼らが辿ったルーツを自分たちも辿ったりを経て、彼らは自分たちのオリジナルの音楽を作る方向に向かった筈だ。
その端緒が『The Gospellers』だったとすると、様々な経験を経て、もう一度、R&Bをポップにやってみせたのが『FIVE KEYS』のように私には映る。
原点回帰。だけど、元の場所に戻ってはいない。
これは螺旋階段をイメージするといいかもしれん。螺旋階段の入口、いちばん下にいたのが最初のアルバム『The Gospellers』なら、螺旋階段を昇ってって『Vol.4』の時に入口の反対側に来た。その後、『FIVE KEYS』で、入口の位置ながら昇ったところに立ってみた。足元、その下がちょうど入口になる。その時、それまでのペースと比べて急ぎ足になった。階段数の分だけ立った位置は上に昇っている。これでイメージ、しやすいですかね…
原点回帰。でも、階段を降りて入口に舞い戻った感が、このアルバムにはないのだ。ちゃんと足は進んでいる。盤全体から、それが伝わってくる。『The Gospellers』を1999年に習作すると、こういう感じになるのかなぁ(嘆息)という言い方も出来るところがまた…、だが(自爆)

だが「侍ゴスペラーズ」→(「星空の五人」)→「或る晴れた日に」と続いた"アルバム序盤で所信表明するスタイル"。これは彼ら崩していないんだよね(苦笑)今回はタイトルチューンがまんま1曲目で「FIVE KEYS」と。
フォーマットは、そう簡単には変わらなかった、というところか。その後も「FRENZY」なんか、わかりやすく出して来ているしね。


FIVE KEYS
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