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Dressed up to the Nines(2004)

以前こういったエントリーを書いているわけですが、前の文章がSide-Aなら今回upする文章はSide-Bというべきかな。書き始めながら、そう思っている。
というわけでアルバムに関して"もっともらしい"文章を書いてみよう其の一。は、2009年から"5年前"という、やや微妙なlooking_backから。


2004年3月リリース、オリジナルアルバム通算9枚目。
どうもアーチストが継続的に活動していって「通算8枚目」「通算9枚目」といった辺りは他を見ても、そして彼らを見ても思うのだ。

「これが最新作リリース当時なら好きなアルバム1位になる可能性も高いけど、この後何枚もリリースされて"じゃ一番好きなアルバムは?"と訊かれたら、9枚目のアルバムの名前ってそうそう出そうにないな…」(苦笑)

『Dressed up to the Nines』をパッと聴いて私が思ったのが「このアルバム、槇原敬之の『Such a Lovely Place』に似ている」である、此れが槇原敬之の8枚目のオリジナルアルバム(で、9枚目が『Cicada』かーー!)。
で、『Dressed up to the Nines』全体に流れる「作品の出来は良い、がコレ渋好みなんじゃね?」と思えるところはSing Like Talkingの『Discovery』のようだ。と思ったら、此れもまた8枚目のオリジナルアルバムだった。
…んー、と。奴ら、アカペラのアルバム入れないと仮定するなら"8枚目"になるのか。
と思うと、継続的に活動するアーチスト故、こういう傾向に陥りやすいのか…?
待て。本当にオリジナルアルバムの8枚目、9枚目あたりは冴えないのか?
この手の例外なのって、オリジナルアルバム7枚目リリース時でメンバー増えた(2人→5人になった)オフコースくらいか?(※)
※:オフコースのオリジナルアルバム8枚目は『We are』で「時に愛は」「Yes-No」収録。9枚目が『over』で「言葉にできない」収録、と代表曲が続々リリースされていた。

ソロアーチストだったり、3人組ユニットであったり、5人組であったり。その形態はそれぞれだが、表向き、表看板に大幅な変更が無い。まー、多少例外ありは槇原の場合。彼の場合、レコード会社移籍後の最初の作品なので、ての、くらいで。
もっとも肝心のゴスペラーズに関して、この点を言及してしまうと、プロデューサーからレコード会社から、メジャーデビューして以降、変わっていない(所属事務所に関しては彼らがデビューしたのが1994年の年末で翌年1995年入って数ヶ月経て、レコード会社預かりから小林さん預かりに変更だからな!確か、ということで、ね、と、お茶を濁す)。
メジャーレーベルでオリジナルアルバムが8枚9枚出るということはイコール、アルバムを出すと一定の売上は出る(出せる)、其の音楽の支持者も居ることの裏付けがとれている、ということ。
そして、アーチスト側はアルバムを作るスキルを相当ストックしている。ということを意味する。既にデビュー時にあった「何がなんだか無我夢中」というのは無い(だろう)。或る程度、アルバム収録曲のバリエーションも、「こういうの」というアルバム全体の形なり流れなりも出来てくる。それだけの、裏打ちされた経験がある。

だから、1アーチストのアルバムで通算8枚目、9枚目となると、どの人も作品はどこかしら"落ち着いちゃっている"といえる。
どーりでゴスペラーズのこのアルバムを聴いて、他の"落ち着いちゃっている"だろうアーチストのアルバムを想起して「あー、アレに似てるわコレにも似てるわ」と思ったわけですよ。でも、そりゃー、過去の経緯をザッと洗えば、そう、皆、同じような道のりなのだ、当然ながら似るよな(苦笑)
なんちゅーか、自作自演の人が得てして入る小路は皆同じドツボ、という感じ。で、ソロなら兎も角、此れ、ゴスペラーズ5人もとろも嵌まったのかもしれんのう……(遠い目)

さて。自作自演の人が己の新鮮味を損なわず(細く)長くやって行きたいのなら、時に自分を俯瞰して自分を客観視できて、自分に良さを出すために手数を切るのが大事。なんだけど案外、自作自演なほど此れが出来ない傾向もあったりなんかするんでゲフンゲフンゲフン…である。で、結果が「作品の水準は高いがどうも一様に落ち着いちゃって」と。
自作自演も織り込みつつ他者の力も借りて楽曲製作を続け、1990年代は小西康陽と組んで『至上の愛』(1992)を出したかと思えば秋元康と組んで『Re-born』(1994)を出す、までの手札ザクザク切りまくった池田聡の領域まで行くと立派の一語なもんだけど、ゴスペラーズにゃとてもとても…だわ(起爆)
要するに。8枚目のオリジナルアルバムに「Yes-No」収録だーー、9枚目で「言葉にできない」収録だーー、のオフコース、ってのは実際のところ、落ち着くどころか"落ち着けなかった"のだ。例外。なわけ。
掲げた表看板は同じでも中身----、その内実は異なる。新たな血(増員された3人)が入ったが、日がそれほど経ていない。これが個々の才能の再スパーク状態を生み出し、バンドとして躍動して行く要因となった。

プロの音楽として一定水準はキチンと保たれている。曲のバリエーションも富んでいる。「この曲は!」というものだって、ある(「Refrections」なんて非常に大好きだ!)。彼らの音楽家としての力量は存分に出せているのだが、同時にデビュー時にあっただろう気負いだの稚拙さだの、は過去の経験と現在の余裕により消え去っている。-----、これが落ち着きの原因なのかもしれない。
そして後発のアルバムが出るのを見るにつけ、このアルバムに対して思うのは
「このアルバムはゴスペラーズ、この一枚!にはなりづらいよなぁ…」
である。彼らの良さはキレイに表現されてパッケージングされているのにもかかわらず、だ。何だろうね、この口惜しさは。


Dressed up to the Nines
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