藤堂尚也は夢の途中で突然目が覚めてしまった。
まだ制服を着ていた頃の夢を見て、
これから悪魔と戦おうかってときに目が覚めてしまった。
夢の中の自分はずいぶんとやる気に満ち溢れていて、
目の前の悪魔はそれに気をされてしまったのか、
なんとも小さくなってしまうのだ。
目が覚めた今だからこそ思う。夢の中の自分は、ちょっと酷かった。
あんなに縮こまるまで威嚇しなくても、いいんじゃないかとさえ思う。
それにしても、夢の中のいじめっこははたして今思考を重ねる自分なのか、
それとも皇帝として目覚めたペルソナなのか。
肺から空気を吐き出すようにそこまで考えて、例えるでなく溜息をつく。
今夜も寝床に潜り込んだちびっこを、
そろそろ元の寝床へ投げ込もうかと視線を向けたそこに、
黒いものがいた
・・・ような気がした。夢の続きかと目元を擦った間にそいつは消えた。
そいつの幻を追って、眼差しは同衾したちびっこへと流れていく。
仰向けに眠るちびっこ。毛布がずれ、パジャマの裾から覗いた真っ白い腹。
この子供は死体のように眠る。身動き一つせず、初めて見たときに驚きを覚えたように。
たとえペルソナ使いの共鳴を僅かに感じても、今、
手を伸ばし触れて、暖かさを確かめねば、
そのまま眠って見る夢が悪夢になるような気がするように。
「なおや、時々寝てるときにおなかさわる」
「なななななおりぃ――ん!こ、子供子供子供に!
あんないたいけなちびっこに発情するよりオレ様がいグハッ!」
「・・・落ち着けヒデヒコ!(顔面にヤクザキック)」
自分とちびっこの横たわるほんの隙間に、
入り込んだ黒いものは、なんだか夢の中の悪魔に似ていたような気がしてならないのだ。
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