★モドル★
盗めない宝石

三浦恭子



「結婚するべきですよ」とイシト。
「べきよねー」とマルチェラ。
「いい加減覚悟を決めようぜ」とグレン。
「結婚はいいぞ」とダリオ。
「そうですわよキッド・・・サラ」とリデル。
「若くていいことだ」と蛇骨大佐。
「やっちまえよ!いいじゃねえか!」とカーシュ。
「そうだそうだ」とゾア。

「・・・他人事だと思って・・・いい気なものね・・・あなた方は・・・。」
サラが怒りに震えて玉座から立ち上がる。
「結婚、結婚ってそう簡単に決められる問題じゃあないのよ!?しかも私ほどの一国の主ともなるものならばもっと慎重に・・・」
「そんなこといってセルジュとラブラブのくせにー」
マルチェラの言葉にサラが固まる。
「・・・と、とにかく・・・この件に関しては保留にします!以上!全員解散っ!!」
ドレスの裾を翻してサラは自室に帰ってしまった。残った重臣達から溜め息が漏れる。
「一国の主だったら・・・国務を差し置いてエルニド諸島にデートしにいくべきじゃあないですよねえ・・・。」
リデルの言葉に皆がちからなく頷いた。

「サラ!」
「セルジュ・・・久し振り。」
テルミナの町で恋人達は久々の逢瀬を楽しんだ。
(セルジュは・・・覚えてないんだよな・・・あの時のこと全部・・・。《他の奴等はしっかり覚えてるのに・・・》・・キッドのこと覚えてない・・・)
時を食らうものからサラを開放したとき、キッドはサラの記憶をすべて思い出し、以後サラとしていきることを決めた。
時々キッドの時の仕草、言葉が出てしまうものの、ジール共和国の統治者としてうまく生きてきた。
セルジュのことはあきらめようかと思った・・・つもりだった。
まさか公務でテルミナに来た時に出会い交際を申し込まれるとは。
(セルジュから言われるとはね・・・性格変わったんじゃないの?こいつ・・・)
セルジュは先月19歳になったばかりだ。いっしょに冒険してたころより顔つきも男らしくなり肩幅とかも広くなったように思う。
(変わった・・・。ううん私知ってた。最初頼りなく感じしてたけど・・・いつのまにか貴方に頼ってた。いつも、見てた・・・のに。)
「サラ・・・どうしたの?」
黙り込んでしまった彼女の顔をセルジュが覗き込む。慌ててサラは顔を上げた。
「あ、ああ・・・なんでも・・・ないわ。」
「王女様は御公務がハードすぎてお疲れかい?」
馬鹿、と彼の額を小突いて彼女は歩き始めた。しばらく歩くと元蛇骨館、今は孤児院になっている場所にたどり着く。
門の中で彼女たちに気づいた子供が手を振ってくる。
「あ!おうじょさまだー!!」
自分の子供のころを思い出しサラは目を閉じた。懐かしい光景が目に浮かぶ。

(あー!マール王女だ!)
(クロノもいるよ!)
(あそぼーよ!ねえねえ!)
(こらー!あんたたち!わらわらいかないの!)
(ルッカ姉ちゃんもおいでよー!!)
(まったくもう・・・)

「私、幸せだったわ・・・子供のころ・・・みんなと一緒で」
サラは後ろに立つセルジュに体をもたせ掛けた。
「孤児だったの私・・・もう孤児院はないけど・・・幸せだった。」
「うん・・・今は幸せかい?」
「幸せよ。貴方がいてくれるから。」
セルジュはくすっと笑い彼女を抱く腕に力を込める。
「それが聞きたかったんだよね。」
「馬鹿ね・・・色ボケしないの。」
「あ、そうだ。ところでさ。」
セルジュはサラの体を離すとポケットをごそごそと探り小さな箱を取り出し彼女に手渡した。
「なに?これ」
「開けてみて。プレゼントだよ。」
箱をゆっくり開けてみて、そこにあったものに彼女は慌てて彼を仰いだ。
「セ・・・セルジュ・・これ・・・」
「うん。指輪だよ。」
「それはわかるけど・・・これは・・・」
そこにあったのは小さなダイヤをあしらった指輪。
「はめて・・・くれる?」
「いいの?・・・私がもらっても?」
セルジュは微笑んでサラの左手を取り薬指にその指輪をはめた。それから自分の左手の甲を見せる。
「同じ指輪・・・」
「結婚してくれないか?・・・僕と」
「ええ・・・・ええ・・・もちろん・・・」
「ほんと!?」
セルジュの顔がぱっと明るくなった。
「よかったー!君が城抜け出すたびにイシト達から早く腹くくれっていわれてて・・・。
 これでずっといっしょだね。・・・キッド。」
「イシト達が・・・?それに今キッドって」
「まあ、そういうことです。」
横のほうからイシトが咳払いしながら現れた。
「どーゆーことだ?セルジュは・・・全部忘れたんじゃ・・・」
「なんとなく覚えてて・・・君と会ううちに全部思い出した。・・・ごめんね?黙ってて。
 君があんまり、その・・・変わっちゃって君のほうこそ忘れたのかな・・・って思ってさ。」
「そうだったんだ・・・ヤダ。何か、恥ずかしい・・・」
「なんで。」
「だって・・・自分だけいろいろやきもきしてさ。全部知ってたんでしょ?」
「すいません、サラ王女。あんまりにもおたくら進展しないもんですから、貴方のスケジュール表見せて頼んだんです。
 あ、でもあくまでセルジュの意志であって私たちが強制したんじゃないですから。」
「・・・私の・・・・スケジュール表?・・・ちょっと見せて。」
サラは恐る恐るイシトの手からそれを受け取って開いた。
「・・・・なんじゃコリャ!?おい、イシト!てめえなんでこんなにスケジュールギッチギチに詰めやがったんだ!?」
思わずキッドの言葉に戻って、イシトに詰め寄るも、平然と
「やだなあ、貴方が色々すっぽかして遊びに行ってた結果こうなっただけで私が悪いんじゃないですよ。」
と、返された。
「結婚式・・・来年だね・・・君が1日もやすまずこのスケジュールこなせたらだけど・・・。」
後ろでセルジュがぼそっとつぶやいた。
「セ・・・セルジュ・・・」
「さあ、帰りますよ、サラ王女!大丈夫。これから睡眠時間3時間に削れば大体1〜2週間は予定より早く挙式できますから!」
呆然と立ちすくむサラにイシトが無情なる一言を浴びせた。

十か月後・・・・セルジュとサラの結婚式が盛大に執り行われたが、元気いっぱいの新郎に対し、なぜか新婦はげっそりと疲れ果ててたそうな。

めでたしめでたし?


キッド可哀相に!(笑)あの写真は無理して笑って撮ったんですねえ。
あ、うちはED後のキッドをあえてサラと呼んでますが、厭なかたはキッドと変換して読んでください。
ちなみにこの二人結婚まで清い(笑)関係です。チューまでしかしとらんよ。
次は初夜編でも・・・グフフ。

★モドル★