あの時どうしようもなくて
ただ君の身体を抱きしめることしか出来なくて
悔恨と安らぎの檻にて
by 裏見 明日(うらみ あす)
「怒ってるって」
「怒ってない」
「嘘付け!じゃあ何で俺のことシカトしてんだよ」
「してない。今もこうやって付き合ってやってるだろうが」
さっきから目の前を歩く瑠璃はトトのほうを一度も見ようとはしなかった。
なんだか最近彼の態度がおかしい。
不機嫌でぶっきらぼうはいつもどおりだったが、トトに対する態度そのものが変化してしまったように思える。
「・・・・・・・・む〜・・・・」
我慢できなくなったトトは力任せに瑠璃のマントを引っ張った。
「うわ!?」
瑠璃がバランスを崩しトトの方へ倒れこんだ。
「・・・・・ってこっち倒れんな!!」
派手な水しぶきが上がった。側の川に二人して落ちたのである。
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・ちっ。いったい何を考えてるんだお前は・・・・・」
「ソレはこっちの台詞だっての!」
マントを絞りながら岸に上がろうとした瑠璃の腕を掴んで引き戻す。
「・・・・・最近、俺の目見て話さなくなった・・・・なんで?」
「・・・・・・・・・別に・・・・・・・・」
「じゃあ!ちゃんとこっち見ろよ!バカ!!」
「なっ・・・・バカとは何だ!バカとは!!」
「バカにバカと言って何が悪い!!」
「バカはおまえだろうが!後先考えず行動しやがって!煌きの都市でのことだってそうだ!
あの時、俺が・・・・・・・・あ・・・・・!」
唐突に顔を真っ赤にして瑠璃は後ろを向いた。
トトはしばらく放心してから同じように顔を赤らめてもう一度瑠璃のマントを掴んだ。
「・・・・・・・ひょっとして・・・・・・えーと・・・・・・焼きもちとかそれに類似する考えを
抱いていらっしゃったんでしょうか・・・・・」
「・・・・・・悪いか。・・・・何べんも何べんも忠告して、結果的に石になって・・・・・
あの時珠魅が・・・・・俺がどんな気持ちだったかわかるか?・・・・・・死んだと思った。
珠魅の涙で石化が溶けてもなかなか意識が戻らなくて身体が冷たくて・・・・・・あの時どれだけ俺が・・・・・・」
「・・・・・悪い。・・・・・まぁでも結果的に良かったからいいじゃん。それで」
そういって笑う。
「だから・・・・・!お前のそういう結果主義なところが俺は・・・・・・」
振向いて言葉を止める。
(・・・・・・・嫌いじゃない)
ビックリした顔の少年の腕を掴んで川の更に深みへ引きずる。
さんざん振り回されて、かき回されて、ならばこれ位はやってもいいだろう。
水面の青の中、水面から注ぐ光がトトの金髪を黄金のように際立たせる。
苦しいって。
水中でトトの口がそう動いた。
俺達珠魅はそういうことわからないからな。
瑠璃は笑って彼の首筋に腕を回す。
トトの眼が一瞬大きく開かれそして閉じられた。
ゆっくり自然に互いの唇を重ねる。
しばらくそのままの体勢で居ると焦ったようにトトが瑠璃の胸を叩いた。
限界だってば。
名残惜しげに唇を放し水面に顔を出す。
「――――――ぶはっ!!」
「悪い。やりすぎた」
「お前・・・・・、怒ったりセクハラしたりころころ替わるよな」
「セクハラとは何だ、セクハラとは」
「セクハラだろ」
ぴしゃりと云われてしまえば瑠璃も言い返す術を持たない。
「・・・・・・なぁ」
「ン?」
水をたっぷり吸ったズボンを抱えながら土手に歩いていくトトを瑠璃は呼び止めた。
「・・・・・・俺ってお前のなんなんだ?」
「・・・・・・・・・は?」
明らかに怪訝な顔。
はっきり言えば答えが返ってくるのが怖い気がする。
トトは意地の悪い笑みを浮かべるともう一度瑠璃の側によって来て彼の唇に己のそれを押し当てた。
「な・・・・・・っ!!?」
トマトのように真っ赤になる瑠璃を尻目にトトは大笑いしながら彼から離れていく。
「こういうこと出来ちゃう間柄〜♪これ以上はまだで〜す。お預けで〜す」
「・・・・・・こ、これ以上って何の話だ!」
益々赤面する瑠璃をよそにトトは濡れた服を乾かそうと既に火を起こし始めていた。
「・・・・・全く・・・・・」
腰に手を当てて苦笑してから瑠璃はふと気付いた。
ああ、何だ・・・・やっぱり「恋」だったのか。
終わっちゃえ!
あとがきなんぞ。
ホモです。ドォーン!!(効果音)
シリアスに決めようとしたらラブコメになったわよこん畜生。
やはり照れが邪魔するようです。
三浦恭子がシマゴンスケさんから頂いたものを読ませてもらって閃いた物です。
裏見的にあまり上手く決まらなかったと後悔してます。今度はもっと!(何)
つうかこれ・・・・・・・・瑠璃トトなのかトト瑠璃なのか判りません。
トト・・・いいのか!?相手は性別の意味なくても男だぞ一応!!
ちなみにコミック版でお送りしてます(謎)
ゴチソウサマでした。大変おいしゅうございました(悦)
あんたサマってばとってもホモスキーでよろしゅうございます。
これからも送ってね♪
モドル